イップス治療

 野球、ゴルフ、テニス、バトミントン、卓球、弓道、ダーツ、楽器の演奏、人前で話す、歌う、外科手術、執筆活動、各種職業などいろいろな動作にイップスは存在します。イップスとは今まで何も意識することなく上手く出来ていた運動動作が、何かをきっかけにコントロール出来なくなってしまい、思い道りのプレーが出来なくなる症状です。個人差はありますが極度のパフォーマンスの低下が起こります。基本的には能力の高い人がなりやすいと言われています。
 現在、イップスという言葉が一般にも知られるようになってきつつあります。まだ、正しく理解されて行くには時間がかかりそうです。イップスの嫌な感覚や苦しみは、なった人にしか分からず周囲になかなか理解してもらえません。プロスポーツの世界でもイップスが原因で引退を余儀なくされるケースが多々あるようです。私自身イップスは、センシティブな(敏感な・傷つきやすい)面があるので、気軽に使う言葉ではないと思っています。ある意味イップスとは、地獄のようなものです。自分の好きなこと、大切にしていることを奪うこともあります。厄介なところは酷くなると、そのスポーツをやっている時だけに収まらず、普段の生活の中の動き・考え方にも影響が出て来ることがあります。

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 はっきりしたガイドラインや診断法が無いので難しいのですが、分類してみたいと思います。まず、①いわゆるスランプをイップスだと思っている人。なんちゃってイップス。このタイプは、練習や気分転換で立ち直れると思います。②イップスになる境界線があるとしたら片足入れて、すぐに抜け出せた人。なりかけイップス。1~2ヵ月で抜け出せた人。③イップスになって深みに嵌った人。完全イップス。私個人の見としては、③のタイプが本当のイップス患者だと思っています。
 ③のタイプは、自分で一生懸命練習しても、監督やコーチの指導を真面目に聞いても、ほとんど改善しないと思っています。それどころか努力すればするほど症状は、悪化していきます。アスリートは、何が間違っているのか見当がつかず、それを「直す」やり方が分からない。アスリートが出来る限りの努力をすると、さらに大きなフラストレーションや苦しみの深みに嵌って行くのです。アスリートが元の状態に戻るようにと、監督やコーチは、知っていることの全てを効果がないのにやろうとする。それに失敗すると、監督やコーチは無力感や敗北感を感じ、アスリート本人に「精神的に問題がある」と結論づけたくなる。そんなことしている間にイップスが一生ものになる可能性があるかも知れません。適切な治療が必要です。私はイップスというものは、まず、ご自身の状態を受け入れ、前向きに適切な治療を行っていく事で完治出来るものだと捉えています。
 これも私の主観になりますが、イップスは、もちろん運動に特徴が出ますが、顔つき・目の使い方・話し方・筋肉の着き方・思考にも特徴が出ます。

 調べてみると現在イップスに関していろいろな対策とられています。野球では投げ方を変える(オーバースローからサイドスローに変えるなど)、ポジションを変える。ゴルフでは、1・2のタイミングで打つ、クラブの握り方を変える、グリップを太くする、パターでは、目を閉じて打つ、長尺パターを使って打つなどがあります。イップスの症状を出さない為の1つの方法ではあると思います。病院では、検査しても特に異常な検査結果は出ないと思います。言い方は悪いですが、せいぜい、うつ状態・パニック症状など精神的なことを言われ薬が処方されるぐらいでしょう。
 でも、このような方法では何とか差し支えないようなプレーが出来たとしても心の満足は、あまり感じられないと思います。イップスの人に起きている心と体のズレみたいなものには、何の変化も起きません。イップスの選手にとって大切なことは、本来の自分の自然な動き、本来の自分の心を取り戻すことです。縺れた糸を無理やり解こうとしても解けません!かえって強く縺れてしまいます。縺れた糸の解き方があると思います。そして心と体のズレが取れた時、それこそがイップスが治った!イップスに打ち勝った!ということです。そして心の満足を得られ、はじめて楽しみながらプレー出来るのだと思います。

イップス発症の仕組み

イップスと脳


 スポーツの時のミスがトラウマとして脳に記憶されることがあります。なぜトラウマとして脳の中に記憶を残すのでしょうか。人間にも本能の部分はあります。危険な体験、怖い体験、怪我をして痛かった、病気で苦しんだこと、そしてスポーツでのミス、これらが脳で恐怖体験として処理され記憶されてしまうことがあります。人間を含め動物は再び同じような危機的状況になった時、自分の身を守る為に防衛本能が働きます。時に防衛本能が過剰防衛となった場合、苦しみにつながることがあります。
 脳の構造として表層は大脳皮質で意識的に考える脳です。脳の奥深くには大脳辺縁系と言われる部分があり本能の部分であり意識が届かなく無意識に働く領域になります。大脳辺縁系の中に扁桃体があります。扁桃体は大脳皮質から送られた5感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)の情報を元に喜怒哀楽を判断し処理します。喜怒哀楽の中で嫌な記憶ほど残ると言われます。それは生き抜く為に防衛本能を働かせる必要があるからです。扁桃体が損傷すると、恐怖、不安、不快を感じることが出来なくなり、防衛本能が働かなくなって危機回避能力に問題が生じます。 危険と判断された場合には、本能的に恐怖を感じ防衛本能が働きます。これは、生命が生き残っていくために非常に大切な機能です。恐怖や不安などを扁桃体が感じたら、信号が間脳の視床下部と言うところに送られ自律神経系にスイッチが入ります。もう一つは視床下部から間脳の下垂体と言うところに信号が送られ内分泌系(ホルモンを出す働き)を刺激します。そして全身に影響が出て手足が震える、足がすくむ、動けなくなる、動きが硬くなるなどが起きるのです。緊張状態が出来上がります。これは扁桃体が判断し体が防御態勢をとっているのです。屈筋優位の状態です。(イップス研究報告⑦参照)野球で暴投をして投げるということに扁桃体が強い不安や恐怖を感じ恐怖体験として記憶した場合、次に投げようとした時、扁桃体が反応し防衛本能が働きストレスホルモンが分泌されたり、自律神経反応が起こり無意識に体は防御態勢をとろうとするのです。
 「楽しい」「心地よい」と感じているとき、頭の中ではドーパミンという神経伝達物質が分泌されます。ドーパミンは、わかりやすく言うと「幸福ホルモン」「快楽ホルモン」とも呼ばれる物質です。逆に、不安や不満、恐怖といったストレスの多い状態や否定的な感情の強い状態が続くと、ドーパミンが分泌されにくくなります。扁桃体が恐怖やストレス感じた場合「ドーパミン産生が抑制」されてしまいます。扁桃体での負の感情→ドーパミン量の減少ドーパミンが多い→運動を促進させる(アクセル) ドーパミンが少ない→運動を抑制させる(ブレーキ)このようなことがイップスの選手の体に起きていると私は考えます。イップスを治すのが難しいと言われるのは扁桃体に意識的なコントロールが届かないからです。
 

 イップスを治すには、いまさらながら心技体ということが大切だと私は思います。技術論だけでは、絶対に治りません!!イップスは、なんらかの事柄が引き金になって心技体のバランスが崩れて起こるものだと思います。イップスの原因は、心にあると言う専門家もいますが、私ならそんなことは言い切れません。なぜなら体の調子がくないと心も落ち込みますし、技術が上手く行かないと心が落ち込むし、体に負担がかかり体のバランスが崩れるかも知れません。心が落ち込んでいると体を動かす気にもなれず、良いパフォーマンスは出来ません。人間てそうじゃないですか?心技体の3つを診なければダメなのです!!
 当院では、心・技・体の3本の糸があったとして、縺れ絡み合った3本の糸を的確に解いて行きます。➊心は、投げることへのトラウマ除去を行います。メンタルが弱い人がイップスになると思われているところがあると思いますが、それは間違っています。メンタルの強い人などいません。人間のメンタルなんて、誰でも弱いところがあるものです。誰でもなる可能性のある病気です。強いメンタルとは、メンタルのコントロールが上手なことです。だから当院では、脳や体の仕組みを勉強し自分でしっかり心身ともにコントロールが出来るようにして行きます。
➋技は、運動指導を行います。イップスの方は、下半身・体幹・腕の動きのタイミングや力の方向が合わずバラバラになっています。運動時にどのような物理的な力が発生して、どのようにすれば物理的な力を有効に使えるのか。下半身・体幹・腕の動きの動きを連動させるには、どのように体の構造を理解して使って行けばよいのか。ということを頭でしっかり理解して行き、骨格に合ったホームを作り上げて行きます。それに伴って腕が自然に振れてきます。体全体を連動させることが出来れば、力まなくても腕は自然に大きく振れます。気持ち良く体を動かせるようになります。それが、ご自身の本来の自然なホームです。
➌体は、バランス調整を行います。骨を矯正し神経の促通を促します。100%脳からの信号が手足に行き渡るようにしていきます。自律神経も整います。神経のバランスが良いと心にゆとりが生まれます。骨を正しい位置に戻すことで、左右対称に本来の正しい体の動きを取り戻すことが出来ます。まず健康的な体でなければ、何をやっても良い効果は出来きません。健康的な体とは、単に痛みがある・なしという自覚症状の問題ではなく、体全体がしっかり調和のとれている状態であるかどうかが重要です。体全体が調和がとれている状態であれば、心と体も調和しやすくなります。心と体の調和がとれている状態であれば、心・体と技が調和しやすくなります。心・技・体の一つ一つが良くなって行くことで、3つの結びつきは良くなり協力しあえる関係になってきます。(逆に言うとイップスの場合、心・技・体がお互いに邪魔しあっている状態。)心・技・体の調和がとれることで成功体験が増えることで、扁桃体の記憶が『投げる』→難しい・怖いから『投げる』→簡単・楽しいに書き変えられます。そうなるとイップスは起こりません。
 心技体の調和をとることで、イップスを完治して行くプログラム(イップスコース)になります。30年以上にわたるイップス研究でイップスの治し方を発見、6回の治療で軽度~重度のイップスまで完治できます。今、イップスで悩まれている方が当院のホームページを開きこのページに辿り着き、イップスになったご自身を受け入れ前向きに治療に取り組む決心をして頂けると嬉しいです。そして力を合わせイップスを治し楽しんで競技に打ち込み、夢に向かって前向きに進んで行けるように心より願っています。*元アスリートで現在引退している方も、ぜひ治療を受けてみて下さい。現役選手でなくてもイップスを経験した方は、今も消えることなく脳のどこかにイップスは潜んでいます。イップスを治すことで気持ちがスッキリし人生観に変化が起きます。

あとがき                                    日ごろ指導者の方々は、情熱を持ってスポーツの現場で選手にご指導せれていることと思います。そうした日常に、何の前触れもなくイップスは選手に襲いかかります。アスリートは、外見はタフに見えますが繊細な心と感情を持った一人の人間です。パフォーマンスする機械ではないのです。どんな一流の指導者であってもイップスのようなパフォーマンス障害を起こしている選手を見たら、指導者の方がどうにかしようとするのではなく専門家に託してください。指導者は、運動指導の専門家であり、イップス治療の専門家ではありません。運動を指導する事とイップスを治すことは、全く別の分野である事をご理解してください。