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イップス研究報告⑮

イップスと性格 

 今までにも説明してきましたが人間にも本能があります。危険な体験、怖い体験、スポーツでのミス、これらが脳で危機的状況として処理され、経験した嫌な記憶をトラウマとして残します。人間を含め動物は再び同じような危機的状況になった時、自分の身を守る為に防衛本能が働きます。これは動物が危険から身を守り生き抜く為の大切な機能です。イップスが脳の誤作動と表現されることがありますが、私は、イップスが脳の誤作動と表現されることにすごく違和感を持っています。イップスは、脳から投げるという意識的な命令と無意識的に防衛本能が働き防御態勢をとれという命令が同時に出ていまい思い通りに投げられないのです。誤作動ではなく、むしろ防衛本能が正常に働いた結果起きているのです。イップスの選手の脳の状態は極めて正常ということになります。しかしスポーツをする時に脳から意識的な運動の命令と無意識的な防御態勢をとれという命令が同時に出てしまうイップスの状態は最大の敵になります。

問診

 脳は3層構造になっています。表層は人間脳と言われ大脳皮質で考える部分です。その奥は哺乳類脳と言われ大脳辺縁系で感じる部分です。その一部が扁桃体です。そのさらに奥が爬虫類脳と言われ脳幹で生命維持に重要な部分です。大脳辺縁系や脳幹には意識的なコントロールは届きません。ボールを投げることは、命の危機が迫っている訳ではないのに扁桃体が投球ミスを恐怖だと感じれば危機的状況になります。扁桃体は感じる部分なので生命の危機が迫っている状況と投球ミスの区別はつかないのです。扁桃体が恐怖を感じれば同じ結果になってしまいます。

問診

 扁桃体は大脳皮質から送られた5感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)の情報を元に喜怒哀楽を判断し処理します。喜怒哀楽の中で嫌な記憶ほど残ると言われます。それは生き抜く為に防衛本能を働かせる必要があるからです。嫌な記憶を脳はトラウマとして残し次に同じような危機的状況に出くわした場合、即座に防衛本能が働くように恐怖条件づけして備えているのです。恐怖条件づけされた出来事と同じ事やそれを連想させることが起きた場合、扁桃体は即座に反応し防衛本能を働かせます。

 

 ブリーフシステムは日本語に訳すと『ブリーフ』は『信念』で、『システム』は『体系』です。「信念体系」のことです。

問診

 ブリーフシステムとは、生まれた時からの経験や、親や先生、友人、メディアからの情報などによって摺り込まれた認識の集合体です。
 個人個人が強く信じて疑わない拘りは、すべてその人の信念なのです。信念は、その人が物事を判断する際の基準となります。「信念」といっても、それらは自分の自由意思で獲得したものではなく、過去の感情を伴った記憶や、過去に自分が受け入れた外部の言葉によって作られます。

問診


 作られたブリーフシステムは、人間の脳の中で最も進化した、知性を司る部位である大脳皮質の「前頭前野」にパターン化されて蓄積され、人はそのブリーフシステムによって、無意識のうちに未来のことを予期・予想して、ものごとを選択したり行動したりするのです。
 世の中で「性格」だと思われているもの、すなわち、その人の思考や行動の傾向を決定するのは、成長の過程で後天的に作られたブリーフシステムであり、当然のことながら遺伝的なものではありません。
 イップスの選手が性格のことをどうこう言われるのは、すごく嫌なことだと思います。それは性格が過去の感情を伴った記憶や、過去に自分が受け入れた外部の言葉によって長年の間に出来上がったものであって、すぐに変えられるものではないし、他人に否定されたくない部分だからです。
 イップスでいうと信念や拘りがイップスに導いたり、イップスを悪化させる原因の一つになります。どういうことかというとミスしてはいけない、悪送球をしてはいけないという固定観念は、ミスや悪送球に対して扁桃体の反応を過敏にします。扁桃体に大脳皮質の意識的なコントロールは届きませんが、大脳皮質と扁桃体では情報のやり取りが行われているので、ミスや悪送球をしてはいけない事だと強く思っていると、ミスや悪送球に対して扁桃体が過敏に反応し不快や恐怖を感じやすくなります。
 小さなミスから大きなミスまでいろいろあると思いますが、プロの一流選手でも必ずミスをします。バッターで言うとプロの一流の選手でヒットの割合が良くて4割です。6割は、上手くボールを捕らえることが出来ずにミスしていることになります。どんなにまじめに練習しても人間は必ずミスしてしまうものです。送球ミスは絶対にしてはいけないという固定観念は捨てた方が良いと思います。そういう信念はイップスになりやすくしてしまいますし、イップスを治りづらくさせます。
 誰もミスや悪送球をしようと思ってしている人は一人もいません。毎日真面目に練習しても必ずミスや悪送球は起きてしまいます。性格は変えなくても良いので、まずはミスや悪送球をしてはいけないという固定観念だけ変えてみましょう!

問診

 当院では、心技体の3つすべてを治療していきます。イップスは心の問題だとよく言われますが、心のケアだけでは、投球のパフォーマンスが戻らないと私は思っています。イップスの心のケアというのは投げることに対して扁桃体のスイッチがONの状態からOFFにすることで、それだけでは投球のパフォーマンスが良くならないことが多くあると思っています。

 ップスになると体が思うように動かず間違った動作を繰り返します。心の問題が解消されても間違った動作の記憶は脳に残ったままです。イップスの期間が長くなればなるほど間違った動作の記憶は脳に色濃く残ります。イップスになる前に技術的には出来ていたとしても、投球動作を理解出来ていたのか?イップスになって2カ月以上ご自身でいろいろやってみて治っていないなら、投球動作の理解ということは出来ていなかったのだと思います。本当にイップスを治すなら投球動作を理解して、正しい投球動作を身に着ける必要があります。扁桃体の投げる動作に対する恐怖条件づけ・すくみ反応を心のケアと投球動作の改善・理解で消し去ります。上手く投げることが出来れば扁桃体は投げることに対しての恐怖条件づけを消してくれます。体に関しては、良いパフォーマンスが出来るコンディションにするとことも、とても重要です。このように考えてイップス治療を行っています。

2019年08月19日

イップス研究報告⑭

イップスの治し方 

問診

 ある研究機関の実験を引用させて頂きます。恐怖条件づけ・すくみ(恐怖)反応の実験です。(詳しくはイップス研究報告⑧参照)マウスに対してブザー音の後に電気ショックを行う。これを何度か繰り返すとマウスはブザー音が聞こえたら、すくみ(恐怖)反応を示すようになる。恐怖条件づけ・すくみ(恐怖)反応の強さは繰り返すたびに増加する。これは、ブザー音の後に電気ショックが来るということを予測し身構え防御態勢をとっているということです。恐怖体験は場合によってはトラウマになり次に同じような状況になった時、即座に扁桃体が反応し防衛本能が働きます。イップスの場合も投げる行為が恐怖条件づけされていて投げようとすると扁桃体が恐怖を感じ即座に防御態勢を取ろうと反応しているのです。(屈筋優位・緊張)
 問題は投げる行為が条件づけされていて防衛本能が働いているのをどうやって解除するかというとことです。
① まず記憶想起とは一度覚えた記憶を思い出すプロセスのことです。一度覚えて脳内で安定化された記憶を想起すると一度記憶が不安定になります。あえて不安定状態を作る。
② 恐怖を感じている事柄に関して身の危険を感じない状況が続けば、「消去」の反応が起こり、恐怖は減退する。恐い記憶を思い出すと、初めの内は恐怖を感じるが、怖がる必要がないことを徐々に学習・記憶する。過去の恐怖体験を書き換え脳に保存する。恐ろしい出来事を伴わない経験の回数が増えれば増えるほど扁桃体の感度は鈍くなる。

問診

 投球イップスを例にするならトラウマになっている出来事を思い出す。記憶を想起してトラウマになっている記憶を不安定にする。そして投球動作とはどういった動きなのか再度理解していく。屈筋優位の状態でも体が上手く動く投げ方があるので、それを学習する。本来この投球動作が無駄のない正しい投球動作になります。動作を理解出来れば投げるという行為が簡単に思えてくる。そうすると投げる行為が難しい・怖いから簡単・楽しいに変わる。このことを書き換え脳に再保存する。そうすると恐怖条件づけ・すくみ(恐怖)反応が起きなくなり、イップスは治ります。前回にも説明しましたが扁桃体は無意識の領域です。意識的に簡単・楽しいと思っても、それは扁桃体には届きません。意識的なコントロールは届かないのです。扁桃体が簡単・楽しいと感じるように治療します。
 個人的には練習で得た感覚というのは、あまり当てにならないと思っています。それは長年野球をやってきたプロの選手でも何かをキッカケにイップスのなって投げ方が分からなくなるからです。動作を理解して、その上で感覚を磨いて行くことが大切です。感覚だけ磨けば良いというものではないと思っています。理解したうえで感覚を磨いて行けば、何かをキッカケにイップスになりかけたとしても自分ですぐに良い状態に戻せます。その事がイップス人口を少なくして行く方法だと思います。

 当院では長年カイロプラクティックを学び関節の構造を理解した上で投球動作を分析しています。カイロプラクティックをしっかり学んだ人間ならではの投球指導行っています。

2019年07月19日

イップス研究報告⑬

イップス発症の仕組み 

 危険な体験、怖い体験、怪我をして痛かった、病気で苦しんだことなどは忘れようと思っても忘れなれずに、キッカケがあれば繰り返し思い出す(フラッシュバック)嫌な記憶です。このような記憶をトラウマと言います。スポーツの時のミスもトラウマになることがあります。トラウマは大なり小なり誰もが抱えているものです。
 なぜ人間はトラウマとして脳の中に記憶を残すのでしょうか。人間にも本能の部分はあります。危険な体験、怖い体験、怪我をして痛かった、病気で苦しんだこと、そしてスポーツでのミス、これらが脳で恐怖体験として処理され記憶されてしまうことがあります。人間を含め動物は再び同じような危機的状況になった時、自分の身を守る為に防衛本能が働きます。時に防衛本能が過剰防衛となった場合、苦しみにつながることがあります。

 

問診

 脳の構造として表層は大脳皮質で意識的に考える脳です。脳の奥深くには大脳辺縁系と言われる部分があり本能の部分であり意識が届かなく無意識に働く領域になります。大脳辺縁系の中に扁桃体と海馬があります。

問診

 扁桃体は大脳皮質から送られた5感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)の情報を元に喜怒哀楽を判断し処理します。喜怒哀楽の中で嫌な記憶ほど残ると言われます。それは生き抜く為に防衛本能を働かせる必要があるからです。扁桃体が損傷すると、恐怖、不安、不快を感じることが出来なくなり、防衛本能が働かなくなって危機回避能力に問題が生じます。
 海馬は新しい記憶が長期記憶として安定するまでの間,短期記憶の貯蔵庫として働きます。「新しい記憶」は海馬に、「古い記憶」は大脳皮質にファイルされているのです。

 

問診

 

 例えば高いところに今立っていると想像して下さい。高いところに立っているという情報が目から大脳皮質の視覚野に伝達されます。次に視覚野から、大脳辺縁系の扁桃体に高いところに立っているという情報が伝達されます。扁桃体で「高い」という情報が危険か、どうかという判断されます。危険と判断された場合には、本能的に恐怖を感じ防衛本能が働きます。これは、生命が生き残っていくために非常に大切な機能です。

問診

 恐怖や不安などを扁桃体が感じたら、信号が間脳の視床下部と言うところに送られ自律神経系にスイッチが入ります。もう一つは視床下部から間脳の脳下垂体と言うところに信号が送られ内分泌系(ホルモンを出す働き)を刺激します。そして全身に影響が出て足が震える、足がすくむ、動けなくなる、動きが硬くなるなどが起きるのです。緊張状態が出来上がります。これは扁桃体が高いところは危険と判断し体が防御態勢をとっているのです。屈筋優位の状態です。(イップス研究報告⑦参照)

問診

 野球でボールを投げるということに扁桃体が強い不安や恐怖を感じた場合、やはり防衛本能が働きストレスホルモンが分泌されたり、自律神経反応が起こり無意識に体は防御態勢をとろうとする。

 「楽しい」「心地よい」と感じているとき、頭の中ではドーパミンという神経伝達物質が分泌されます。ドーパミンは、わかりやすく言うと「幸福ホルモン」「快楽ホルモン」とも呼ばれる物質です。逆に、不安や不満、恐怖といったストレスの多い状態や否定的な感情の強い状態が続くと、ドーパミンが分泌されにくくなります。
 扁桃体が恐怖やストレス感じた場合「ドーパミン産生が抑制」されてしまいます。
扁桃体での負の感情→ドーパミン量の減少
ドーパミンが多い→運動を促進させる(アクセル)
ドーパミンが少ない→運動を抑制させる(ブレーキ)

 このようなことがイップスの選手の体に起きていると考えられます。

2019年07月19日

イップス研究報告⑫

投球と慣性の力 

 イップスの選手は、共通して投球時に慣性の力を上手く使えていません。メンタル面が改善されても、慣性の力を上手く使えなければ思うような投球は出来ません。慣性の法則とは、止まっている物体に力を加えなければ、そのまま止まり続け、動いている物体に力を加えなければ、そのまま動き続けるという法則です。

 図1を見るとの方向に自動車が直進しています。慣性の力は、の方向に働きます。の方向に曲がる時、ハンドルを右に回し慣性の力に逆らっての方向へ進んで行きます。

問診

 図2と図3はジェットコースターが走るコースを表したものです。図2と図3は、コースの形は違いますが1周の距離は同じものとします。(高低差は無し・途中の加速なし)赤のラインがスタートでスタートした時、図2と図3のジェットコースターともに時速100kmとします。1周して赤のラインに戻ってくる時どうなっているでしょう?

 

問診

 

問診

 図2は比較的なだらかなカーブでコースが作られているので1周回ると減速はするもののある程度、慣性の力が保たれた状態になります。

 図3は急なカーブが多くあり慣性の力が著しく失われて極端な減速が起こります。図3は極端な減速が起こる為、図2と比べて1周回るタイムが遅くなってしまいます。

 投球の時の腕の軌道は、慣性の力を利用して加速させながらリリースの瞬間に最大のエネルギーをボールに伝えることが重要です。逆に慣性の力を上手く利用できず腕の振りが減速してしまう投球は、リリースの瞬間にエネルギーを上手くボールに伝えることが出来ず、手離れが悪かったり、リリースポイントが分からなくなったり、リリースまでに減速しているので最後スナップで補おうとして手に力が入ったりします。

 

問診

 

 次に 慣性の力に逆らった投球の例を挙げていきます。①テイクバックの時に体重移動が始まっているのにボールを投げる方の腕に背中側への力が働く。正面から見てボールを投げる方の腕が背中側に見えてはいけないと言っているのではありません。体重移動が始まっているのにボールを投げる方の腕に背中側への力が働くとお互いに邪魔しあっていることになり慣性の力も奪われ腕の振りは減速してしまいます。

問診

  テイクバックの時に前方に体重移動が始まっているのにボールを投げる方の腕に後方への力が働く。ボールを投げる方の腕を後方に持って行くことが悪いのではなく、体重移動が始まっているのにボールを投げる方の腕に後方への力が働くことが良くないのです。お互いの力が邪魔しあって慣性の力も奪われ腕の振りは減速してしまいます。

問診

 ボールを投げる手がトップの位置で、下半身と体幹は体重移動から回転運動に移ろうとしている状態です。この時、ボールを投げる方の腕で反動をつけようとして後方に引くと下半身や体幹とボールを投げる方の腕の力の方向が逆になり慣性の力も奪われ腕の振りは減速してしまいます。

問診

 ④コッキング期の後半(リリースの直前)下半身と体幹は回転運動をしているのにスナップで反動をつけようとして後方への力が働く時、やはりお互いの力が邪魔しあって慣性の力も奪われ腕の振りは減速してしまいます。

問診

 ⑤肘から先に出すことを意識した場合、下半身や体幹の動きを追い越して腕が出て来てしまいます。この場合も慣性の力を奪い減速します。下半身や体幹に引っ張られながらボールを投げる方の腕が出て来る時、手より肘が先行して出て来るので肘から出しているように見えるのです。肘から先に出すという意識は間違いが起こりやすいと思います。

問診

 ⑥肘から先に出すことやリリースを意識すると腕単独の動きになりやすく、下半身や体幹との連動が絶たれてしまいます。腕を振る方向と体幹の回転方向が合いません。この場合も慣性の力が奪われ減速してしまいます。

問診

 ①~⑥は慣性の法則の動いている物体に力を加えなければ、そのまま動き続けるという性質の妨げになっています。投球の開始からリリースまで慣性の力を利用しながら行うことが大切です。慣性の力に逆らう投球は腕の振りが減速してしまい筋力に依存する投げ方になります。筋力に依存する投げ方は屈筋優位(イップス研究報告⑦)を招きイップスが起こります。力の方向が合っていないと腕に引っ掛かり感が出たり、動きが止まったりします。リリースの瞬間までに加速し最大のエネルギーをボールに伝えられるのが正しい投球です。関節の動きに沿ってしかも慣性の力を利用した体の使い方を習得する必要があります。

問診

 イップスの話でよく意識と無意識のことが言われます。先ほどの例に当て嵌めるとテイクバックを意識すると①や②の状態になりやすい。トップの位置を意識すると③や④の状態になりやすい。肘を出すことやリリースを意識すると⑤や⑥の状態になりやすいと思います。なぜ意識するとイップスが起こりやすく、無意識だと起こりにくいのかというと意識した投球は慣性の力を邪魔する動きが入りやすい。無意識での投球は慣性の力を邪魔する動きが少なくなる。投球ホームの改造でイップスになるのも技術面だけで説明すると、この事が原因です。監督やコーチは選手のことを思って指導してくれているのに選手が指導されたことを意識して投球すると慣性の力に逆らった投げ方になってしまいイップスになって行くこともあります。意識することで慣性の力が奪われ、流れるような連続した動きが出来なくなるのです。

 自信の持てない選手が、無意識に投げるというのはとても不安なことです。また技術の向上やミスをしない為には意識して投げる必要もあると思います。反復練習して無意識に出来るようになるのが一番ですが、そう簡単にはいきません。

 私は意識して投げることが悪いとは思いません。意識した投球で慣性の力が奪われる場合、意識するところや意識の仕方が間違っている可能性があります。

問診

 当院では運動指導する時、のところのような末端部分を意識するのではなくの部分を意識することで、その動きに全体がついてくるように指導します。そうすることで慣性の力を生かしたスムーズで流れるような正しい投球が出来るようになります。

2019年06月09日

イップス研究報告⑪

投球とテコの原理 

 体を動かす時、3パターンのテコが存在します。第一のテコは、支点が真ん中で端が力点と作用点になります。第二のテコは、端に支点で真ん中が作用点で逆端が力点になります。第三のテコは、端に支点で真ん中が力点で逆端が作用点になります。

問診

 イップスが発動された時、選手の体は屈筋優位の状態に陥ります。筋力に依存する投げ方は、より屈筋優位を強めてしまいます。逆に物理的な力を利用した投球は屈筋優位を弱めてくれます。今回説明していくテコの原理は筋肉が骨から骨へ関節をまたいで付着している以上、体を動かす時に必ず使っています。体を動かす時に無意識の内にテコを必ず使っているものの正しく使えているか、より効果的な使い方が出来ているかということが重要になってきます。

 例えば5tの重さの象がシーソーに乗っていたとします。象の乗っている位置は支点から5cmのところとします。50kgの人が5tの象をテコを使って持ち上げることが出来るでしょうか?

 5000(kg)×0.05(m)=50(kg)×□  5000(kg)×0.05(m)/50(kg)=5(m) 計算上の話ですが、支点から5mのところに50kgの人が乗ると5tの象と釣り合って5mを超えると象を持ち上げる事も可能ということになります。それほどテコの力は強力だということです。

 

問診

 

 人体の中にテコとして働く部位は無数に存在します。その中でも投球時に使う重要な大きなテコについて説明します。

問診

 まず1つ目のテコは投球時に正面から見た場合、グラブを持っている方の腕が力点で胸が支点になりボールを持った手が作用点です(第一のテコ)。本来、支点から力点や作用点の距離が遠ければ遠いほどテコの力は強くなりますが、投球の場合は回転運動をしながらテコを使うことを考えればグラブをはめている腕をコンパクトに使い、体幹軸の回転速度を上げる必要があります。フィギアスケートでも腕を伸ばし広げた時の回転速度は遅く、腕を曲げて体幹に近づけた時の回転速度は速くなります。逆に作用点は支点から出来るだけ離れた位置に持って行きテコの力を最大限使います。意識して支点から作用点の距離を離すのではなく、遠心力が上手く使えていれば勝手に離れます。体幹の回転にボールを持っている方の腕が振られれば、遠心力が働きリリースの手前ぐらいで支点から作用点までの距離は最大になります。作用点と力点の力の方向は支点を中心に真逆の方向になります(上の第一のテコの図を参照)。正面から見た時、このようなテコの使い方が出来れば物理的に正しい投球に近づきます。

 

問診

 

 次に2つ目のテコは、横方向から見た時に踏み出した足の股関節が支点になり胸が力点でボールを持った手が作用点になります(第三のテコ)。股関節が支点になり胸辺りを力点とした前方への力が生まれ、その力に腕が引っ張り出されるように振られ手が作用点となります。

問診

 股関節を支点として力点である胸辺りの前方への力に腕が引っ張られながら出て来る時、体幹・腕はしなります。体幹や腕がしなれば弓矢のように張力もテコの力にプラスして使え、より強い力をボールに伝えることが出来ます。

問診

 投球時の技術面の話になりましたが、投球時にこれらのテコを上手く使うことでイップスの時に起こっている屈筋優位や硬直を軽減しスムーズに投球することが出来ます。リリースの瞬間、テコや遠心力が上手く使えていればボールに上手く力が伝わり自然とボールが手から離れて行きます。リリースの瞬間に迷うのはこれらの物理的な力が上手く使えていない可能性が高いと思われます。

2019年05月12日

イップス研究報告⑩

 正しい投球動作は体重移動し踏み出した足が着地した時には、ボールを投げる手がトップの位置に来ていて、踏み出し足の着地と同時ぐらいに軸の回転運動が起こり、その軸の回転に腕が引っ張られるように振られてボールを投げるという一連の動作になります。

問診

 正しく連動した投球動作は、車の運転に例えるならアクセルを踏んだ状態です。ロスなく体重移動や回転運動の力を生かして腕が振られるという動作です。速い球・遅い球・遠くに投げる・近くに投げるなどを調節するのは、アクセルを強く踏むか弱く踏むかです。投げる動作の途中にブレーキを踏むという行為は必要ないですし、踏んではいけないということです。あくまでもアクセルだけでコントロールすることが大切です。

問診

 

 イップスの場合、投球動作の途中でブレーキをかけてしまっていて一連の連動した動作が出来ないのです。なぜブレーキがかかるかというと心の問題(防衛反応が働く、躊躇い加減するなどの感情が働く)もありますが、技術的なことで言うとそれぞれの関節が動きたい方向と動きたくない方向があるとしたら、関節のどこかが動きたくない方向に動かされている。または関節が動きたいタイミングと動きたくないタイミングがあるとしたら動きたくないタイミングで動かされている。

問診

 

 人体の関節の構造の説明です。胸郭と肩甲骨の間にできる関節が肩甲胸郭関節・胸骨と鎖骨の間にできる関節が胸鎖関節・肩甲骨と鎖骨の間にできる関節が肩鎖関節・肩甲骨と上腕骨の間にできる関節が肩関節・上腕骨と尺骨の間にできる関節が腕尺関節・上腕骨と橈骨の間にできる関節が腕橈関節・橈骨と手根の間にできる関節が橈骨手根関節・手の関節として手根間関節、手根中手関節、中手指節関節、指節関節などがあります。肩から先だけでこれだけの関節があって、それぞれに関節の特徴があり動きが様々です。これらの関節を意識的に連動させて動かすのは至難の業です。

 

問診

 

 当院では、関節の構造を踏まえた上で重力・作用反作用の力・慣性の力・遠心力・テコの原理などを最大限利用して投球動作を作ります。その選手にとっての正しい投球ホームはいくつもある訳ではありません。正しい投球ホームは一つだけです。関節の構造を踏まえた上で物理的な力を利用すれば一つの投球ホームに辿り着きます。良いホームとは、筋力を出来るだけ使わず物理的に生まれたエネルギーをボールに伝えるといった形になります。その投球ホームこそが筋肉や関節に無理のない正しい形です。大切なことはリリースの瞬間にしっかりとボールに力を伝えることです。力一杯投げなくても物理的な力を使いこなせれば速い球を投げれますし、自然とコントロールも良くなります。無理なホームの修正をするのではなく、ドリルをこなして行きながら自然と物理的に正しい関節の使い方が習得できるようにして行きます。

2019年04月01日

イップス動画配信のお知らせ

 誰にも相談出来ずにイップスで悩んでいる選手は多いと思います。そんな選手たちに向けてのイップスに関する動画をYou Tubeにアップしようと思います。今、ご自身に起きている事を理解出来れば、ほんの少しかも知れませんが安心感に繋がると思います。何が起きているのか分からなければ不安の中、野球をすることになります。そうならない為に少しでも力になることが出来れば嬉しいです。

 

当院のYou Tube動画について

①当院の単なる宣伝を目的とした内容にならないようにする。

②見た人が不安になるような内容ではなく、少しでも安心して頂けるような内容になるように努力する。

③You Tube上でのコメントは受付けません。(どなたか分からない方に向けて真剣なコメントを返せない為。)

④医学・科学・物理学を踏まえた上で偏った考えにならないように気を付ける。

⑤難しい内容のことを分かりやすく説明するように努力する。

⑥イップスはメンタル的な部分も関わるので、どういう人間が治療するのか知って頂く。

2019年03月22日

イップスのお父さん応援します

親子キャッチボール
 学生時代野球部で頑張っていて、その頃にイップスになってしまい何年も経った今も引きずっている方は多いと思います。お子さんとキャッチボールしたいという気持ちは、あるものの投げることに対しての恐怖感や自信が持てなく避けてしまう。お子さんからしてみればキャッチボールしたいとお願いしても、何だかんだ言い訳されて断られるとこは悲しいことだと思います。

問診

 お子さんとキャッチボールが出来る時期は限られています。親子でキャッチボールをしたということは二人にとって大切な思い出になります。イップスを克服することは自分自身のことを深く知ることに繋がります。克服出来たということは自信に繋がり生活の他の面にも良い影響が出て来るものです。
 私は親子でキャッチボールをすることは大切なコミニュケーションの一つで、大切な思い出の一つになることだと思っています。大切な人生の1ページです。お子さんと楽しんでキャッチボール出来るようにお手伝いさせて頂きます。

2019年03月02日

イップス研究報告⑨

投球おける遠心力 

 今回、技術的な話をしたいと思います。体幹の回転運動で腕が振り出されて遠心力を使って投げるということについて考えていきます。

問診

 紐に重りを付けた振子は、軸に回転する動きがなければ遠心力が働かず真下で停止しています。

問診

 軸を回転させると振子に遠心力が働き、軸から離れながら軸の回転方向に進んで行きます。黄色の矢印の方向に遠心力は働きます。

問診

 さらに軸の回転速度を上げて行くと振子に強い遠心力が働き、軸に対して直角のところに来ます。遠心力が最大でこの位置に来ます。遠心力は中心軸から離れようとする力なので、これ以上振子が上に上がることはありません。

問診

 実際に投球動作の時にどのように遠心力が働いているか説明していきます。サイドスローの場合、体幹軸は地面に対して直角ぐらいで、遠心力が上手く使えている状態の時、上腕軸は体幹軸に対して直角になります。黄色の矢印が遠心力の働く方向で体幹軸から離れようとする方向になります。緑線を見て頂くと手の位置が肘より外側にあります。トップの位置では、手が肘よりやや内側にありますが、(トップの位置で、すでに手が肘より外側に来ている選手がいますが、この投げ方は肘や肩の負担がかかるのでお勧めしません。)遠心力で加速がついた時には手の位置が肘より外側来ます。これは遠心力が働くと体幹軸から離れようとするから自然とそのようになるのです。

問診

 オーバースローの場合は、踏み出した足の方に体幹軸を傾けます。そのこと以外はサイドスローの場合と全く同じです。正しいオーバースローの投げ方は腕を上げているのではなく体幹軸自体が踏み出した足の方に傾くから結果的に腕が上がっているように見えるのです。あくまでも遠心力は体幹軸から腕が離れようとする力で体幹軸と上腕軸の関係は直角になります。(遠心力は黄色矢印の方向)

問診

 アンダースローの場合は、逆に踏み出した足とは反対の方に体幹軸を傾けます。そのこと以外はサイドスローと全く同じです腕を下に下げて投げているのではなく、体幹軸を踏み出した足とは反対の方に傾けるから結果的に腕が下がって見えるのです。この時も遠心力は体幹軸から離れようとする方向です。(黄色矢印)

問診

 悪い投げ方を説明していきます。遠心力が上手く使えている場合、体幹軸に対して上腕軸は直角になります。肘の位置が上腕軸の青線より上がっても下がってもダメなのです。黄色線が上腕軸だとしたら体幹軸と直角の関係になっていないので遠心力は上手く使えていないことになります。次に緑線を見てみると手が肘より内側に来ています。これも遠心力を上手く使えていない証拠です。

 イップスの選手は体幹軸と上腕軸の関係が乱れます。関係が乱れているから体幹回転時に肘か上がり過ぎたり下がり過ぎたりします。体幹軸の遠心力が使えず手は肘より内側を通ります。(屈筋優位も影響する。腕が縮こまる)サイドスローで考えてみると体幹軸が横方向の回転をしているのに手が肘より内側に来ているということは、腕自体は縦に振っていることになり体幹と腕の振りにはバラバラの力が働き体幹の体重移動や回転力はまったく腕には伝わっていないことになります。結果、手投げになるということです。

 イップスの選手の体はホームをいじられること嫌がることが多々あります。当院では動きのドリルをこなしながら正しい関節の動きを身に着け、物理的に正しい投球ホームを自然に習得出来るようにしています。目指すべき技術として①トップの位置では手が肘より内側を通り、体幹軸の回転で遠心力の加わった時には手が肘より外側を通り、しっかり遠心力を腕に伝えられる。②体幹軸の遠心力が腕に伝わり自然に体幹軸と上腕軸が直角になる。③トップの位置の前後で腕に働く慣性の力(物体が進んでいる方向に進み続けようとする力)を有効に使い体幹軸の回転に腕を乗せる。イップスでなくても慣性の力を殺しながら投球している選手はたくさんいます。慣性の力を利用するにはコツがいりますが上手く身に着けられる方法を行います。習得出来れば格段に技術力は上がります。この事は、ほとんどの競技で共通することです。

 イップスを治していくに当たって正しい技術を理解し身に着けることも大切なことの1つです。

2019年02月13日

イップス研究報告⑧

防衛本能とイップス② *すくみ(恐怖)反応 ・身構える・防御勢・恐怖に怯える

 イップスは、いつ起きるのか?ある研究機関の実験を引用させて頂きます。恐怖条件づけ・すくみ(恐怖)反応の実験結果です。マウスに対してブザー音の後に電気ショックを行った。これを何度か繰り返すとマウスはブザー音が聞こえたら、すくみ(恐怖)反応を示すようになる。恐怖条件づけ・すくみ(恐怖)反応の強さは繰り返すたびに増加する。これは、ブザー音の後に電気ショックが来るということを予測し身構え防御態勢をとっていることの表れです。恐怖条件づけ・すくみ(恐怖)反応は魚類、マウス、人間といった多くの生物で認められる普遍的な現象のようです。

問診

 右バッターの時だけイップスが起こるピッチャー。バント処理などでファーストに送球する時だけイップスが起こるピッチャー。バント処理などでサードに送球する時だけイップスが起こるピッチャー。ピッチャーに返球する時だけイップスが起こるキャッチャー。サーブの時だけイップスが起こる卓球選手。パターの時だけイップスが起こるゴルファー。PKの時だけイップスの起こるサッカー選手。ボールは投げられるがダーツが投げられないダーツの選手。練習では起こらず試合の時だけイップスの起こる選手。怖い先輩相手の時だけイップスが起こる選手。監督・コーチに見られている時だけイップスが起こる選手。

 その行為だけ恐怖条件づけされていて、すくみ(恐怖)反応が起こるのかも知れません。行為そのものがブザーの役割をしているのです。送球全般でイップスが起こる選手は、送球そのものが恐怖条件づけられています。素振りは出来るがボールを打とうとするとイップスが起こるゴルファーも同じです。

 

問診

 右バッターの時だけブザーが鳴りイップスのスイッチがNOになるピッチャー。バント処理などでファーストに送球する時だけブザーが鳴りイップスのスイッチがONになるピッチャー。サーブの時だけブザーが鳴りイップスのスイッチがNOになる卓球選手。また球場・体育館・競技場に行くだけでブザーが鳴りイップスのスイッチがONになる選手がいたり、家を出て球場・体育館・競技場に向かっている時に早々とブザーがなってしまう選手もいると思います

 一度の失敗では条件づけされなくても、次は失敗出来ないと強く思い再度失敗してしまう。気持ちは焦りパニックの状態でもう一度失敗してしまう。それは恐怖体験となり心にトラウマとして残ります。それと同時にその行為が条件づけされイップスを発動させるブザーが出来るのです。

 ボールを投げる時、リリースの瞬間にイップスが起きているのではなく、少なくとも投げる行為自体がイップスで、その行為が始まった時点から起きていると考えられます。リリースの瞬間が気になるのはよく分かりますが、貯まった運動エネルギーを最終的にボールに伝える瞬間がリリースに過ぎません。リリースの瞬間だけを見るのか、全体像を見るのかでイップス改善のアプローチは、まったく違うものになってくると思います。

2019年02月08日

イップス研究報告⑦

防衛本能とイップス①

 動物には防衛本能がある。危機的状況が迫った時に命を守る手段として①闘争(攻撃行動)②逃走(危険対象から離れ命を守る)③防御(・背を向けて丸くなる・硬い背部を表にする・表面積を小さくする・柔らかい腹面には大切な内臓があるのでしっかり守る)。地球に最初の生命が誕生したのは約 38億年前のことです。進化の過程で生き残るために動物はいろいろな本能を獲得して来ました。その中の1つが防衛本能です。

問診

 もちろん防衛本能は人間にも備わっていて、例えば工事中のビルの近くを歩行中に、「危ない!」という声が聞こえたら咄嗟に頭を隠して体を丸くすると思います。人間の場合、学習して危険な時には大切な頭を守るということを意識的にやっている部分もあると思いますが、無意識的に防衛本能が働いて体を守る態勢になっている部分もあるのです。

 

問診

 スポーツにおける大事なプレーの時にミスしてはいけないと思う気持ちやミスをして落ち込む気持ちやミスによる羞恥心は、危機的状況として処理されてしまうことがあります。危機的状況での恐怖体験はトラウマになり心に残ります。体験したことが恐怖かどうかは意識的に決めるのではなく、無意識的に心が恐怖だと感じれば恐怖でありトラウマになってしまうことがあるのです。トラウマが心の中に残り同じ恐怖を予感させる状況になった時、危険を避け生き抜くための防衛本能が無意識に働きます。

 正しい運動は骨盤が前傾気味で伸筋がやや緊張した状態で行われる。体重移動や回転運動がスムーズに出来る状態です。

 

問診

 逆に危機的状況を予感して防衛本能が働いた状態が心の面から見たイップスの状態で無意識に防御態勢をとろうとする。防御態勢とは、体を丸くし腕や足は曲げた状態です。イップスの起こっている時、体幹は屈筋優位の状態となり骨盤が後傾し背中はやや丸くなる。手・腕・足も屈筋優位で伸びにくくなる。

 

問診

 イップスで骨盤が後傾し背中がやや丸くなった状態では、まず体重移動と回転運動が上手く行かない。胸を張る動きも出来ないのでトップの位置に手を持って行けない。腕も屈筋優位の状態で投げる・打つの動作の時、腕が縮こまり、手の筋肉も屈筋優位でボールが指に引っ掛かり地面に叩きつけるような送球になる。ボールが指に引っ掛かることを避けたくて無理やり力を抜こうとするとボールの下を指で撫でる形になり高めに浮く。酷いと投げる動作の途中で落球する。イップスの選手でよくある話ですが感覚が無く自分の腕・手ではないように感じる。手に手袋をハメている様で感覚が鈍い。最終的に自分の身を守れず動物が捕食動物に捕食される時、防衛本能の最終手段として痛みを感じないように麻痺状態になると言われています。もしかしたらイップスの腕・手の感覚が鈍くなるのも関連性があるのかも知れません。

 イップスは動物が本来、命を守り生き抜くための防衛本能が正しく働いた状態で異常なことではないと思っています。健康な状態の選手に当たり前に起こり得ることなのです。

2019年02月06日

イップス研究報告⑥

イップスの起きやすい力加減と距離

 下の奇妙な絵は、ホムンクルスの脳の領域と言って脳の領域の割合を示したものです。絵を見ると手がとても大きくなっているのが分かります。手がより敏感で繊細な動きが出来る事を示しています。サッカーなど足をよく使う競技の選手の場合、鍛錬のよって足の領域が大きくなるので足の動きに関してもイップスは起こります。失敗などがトラウマになり不安な気持ちになった時、感覚が敏感で繊細な動きの出来る手に頼りたくなります。でも手に頼ろうとすると過剰に手先に意識が行き手先主導の投げる・打つという動作になってしまいます。本来、足→体幹→腕→手の順番で力が伝わるのに手先始動になると動くタイミングがバラバラになり、それを察知した脳は異常に気づき動きを停止するか筋肉が硬くなります。それが運動面から見たイップスのメカニズムと言ってもよいのかも知れません。期間が長くなれば手先主導の間違った動きを脳は記憶してしまいます。

問診

 イップスは微妙な距離や微妙な力加減で起きやすいと言われます。当院のアンケートでも中間距離で30~70%の力加減の時にイップスは出やすいという結果になっています。近距離や10%ぐらいの力加減の時は出にくい。また遠距離や100%ぐらいの力加減の時も出にくいという結果になっています。今回この事について解説して行きたいと思います。      

 まず距離が近いと的が大きくなり、距離が離れるにつれて的が小さくなる。逆に距離が遠すぎる場合には相手がボールに合わせて動ける時間的余裕が生まれるので的を大きく設定出来る。だから的が小さくコントロールが要求される中間距離の時、手先に意識が行きやすくイップスが起こりやすい。

問診

 10%ぐらいの力加減で投げたり打ったりする場合、比較的近距離なことが多いので的が大きくイップスが起こりにくい。近距離だと手投げ手打ちでも対応出来てしまう。腕を振る速度が遅いので誤魔化しが利く。

 30~70%ぐらいの力加減の時は中間距離のことが多く、的が小さく手先に意識が行きやすい。微妙な力加減をしようとすると足の踏み込み幅は小さくなってしまう。足の踏み込み幅が小さいと体重移動と体幹の回転運動が上手く行きにくい。図B

 100%ぐらいの力加減の時は、中間距離であっても足の踏み込み幅が大きくなりやすく体重移動と体幹の回転運動が上手く行きやすい。遠距離は100%ぐらいの力加減で対応することが多い。図A

問診

 スムーズな体重移動や体幹の回転運動を行うには、股関節・腰椎・胸椎・肋骨の1つ1つが動く体であることが条件です。正しい投げる・打つ動作は、腕が体幹の回転によって遅れて引っ張り出されるような運動です。腕が体幹の回転に引っ張り出されるのを待たずに連動の順番を追い越して腕を前に出そうとした瞬間に体幹の動きは止まり体重移動も回転も不十分になります。小さな的を狙おうとすると、もともと過敏で繊細な手先を意識してしまい手や腕主導の運動になり体幹の運動が不十分なものになりイップスが起こりやすくなります。

 治療では、不安を取り除き(心)動ける条件の整った体にし(体)地面をしっかり使いスムーズな体重移動と体幹の力強い回転力を利用し遠心力を最大限に生かして腕を振る(技)ということを身に付けて行きます。

2019年01月16日

イップス研究報告⑤

イップス治療方針

 関節の軸の運動を歯車に例えるなら、投げる・打つという運動は体幹の大きな歯車の動きに伴って肩甲骨や股関節が動き出し最後に末端の歯車に力が伝わります。正しい運動は、体幹や股関節始動で行われます。イップスの選手は、手先に意識が行き過ぎてしまいます。手先始動では、運動動作は上手く行きません。これは、ダーツや弓道でも同じです。ダーツや弓道では、体幹や股関節は動いてないように見えますが体幹と股関節を使って、しっかり軸として機能させなけらば上手く行ません。

問診

 イップスになる前は無かったスイッチがイップスになった途端現れます。プレッシャーのかかる状況になった時、スイッチはONになる。またはスイッチが常にONのままの選手もいます。イップスのスイッチが入ると体幹の歯車の動きに対して肩関節や手関節などの歯車が凍りつき動きにくくなったり、逆方向に動こうとしたりして体幹の歯車に沿った動きをしてくれません。

問診

 

 当院のイップス治療では心・技・体の3つにアプローチして行きます。心は、イップスのスイッチをOFFの状態にしていきます。技は、体幹・股関節始動で他の関節が体幹や股関節の流れに沿った動きが出来るように運動を再構築していきます。体は、骨盤・背骨を矯正しズレや歪みを取り神経の流れを正常にする。骨盤や背骨が正しい位置に戻ると椎骨と椎骨の間にある椎間板がしっかり機能しバランスの良い軸を作ってくれます。

正しい椎間板の機能

問診

 

 スポーツにおけるバランスの良い安定した体幹とは力が釣り合っている状態であって、体幹の静止や固定ではありません。強く固めるような体幹は、実際に投げる・打つといった動作の時に十分に機能してくれません。椎間板の機能をフルに発揮させどんな状況でも瞬時にバランスの取れる安定した軸を作って行くことが大切です。それは、体幹軸の動きに足や腕の動きが影響を受けるからです。大きな歯車の動きに小さな歯車の動きを合わせた方が動きがスムーズですし動きの誤差が少なくなります。イップスの改善で大切なことの1つとして運動動作の再現性を高めることがあります。毎回同じ動きが出来ると思えることが安心感になり自信に繋げてくれます。やみくもに練習を繰り返しても間違った運動パターンが脳にインプットされるだけです。それに間違った運動は、故障に繋がります。間違った動きを続けると歯車の歯が欠けてしまいます。イップスになったら一度冷静になり自分自身としっかり向き合い何をすべきか真剣に考えることが必要です。

2018年12月07日

イップス研究報告④

当院の技術的な考え②

 もしも真っ暗闇で音も聞こえず、匂いもしない風も感じない状態で前に歩くことが出来ますか?

問診

 普段、私たちが歩いて目的地に行けるのは、周りの景色や車の通る音、飲食店から出る匂いや海から来る風など感じ取って自分の居る位置を把握します。自分の居る位置が基準になり目的地に行くにはどうするか考え歩き出します。

 真っ暗闇で自分がどこに立っているか分からなければ、歩いた先に崖があるかも知れないなど自然と自分の身を守るためにネガティブなことをイメージして怖くて前に進めません。

 イップスの選手は、体の軸が不安定で定まっていません。緊張する場面では筋肉が硬くなり体の軸はより一層不安定で定まらないものとなり、自分の体ではないような感覚に陥ります。軸が安定しないということは運動の時に基準となるものがないということです。運動の時に基準となるものがないと、どう投げ始めて良いのかどう打ち始めて良いのか分からなく躊躇します。スタートの時に基準が分からないのでスムーズにフィニッシュまで行くことなど出来ないのです。脳は、軸が定めっていない事を察知しています。だから投げる前からなんとなくイップスが出ることが自分では分かります。(予期不安)

 よくイップスの選手に対してポジティブに考えて楽しみながらやれば乗り越えられるなんていうアドバイスをする方がいますが、私は、それはイップスの選手に対してとても酷なことだと思います。何故なら真っ暗闇をポジティブに考え楽しみながら進めば大丈夫と言っているようなものだからです。本人はとても怖くて不安なのです。その恐怖感は、せめて懐中電灯でもなければ解消されません。イップスでは軸の安定感が恐怖感を安心感に変えてくれます。

 耳の内耳という所に三半規管があります。体のバランスと保つ役割をします。背骨の椎体と椎体の間には椎間板があります。頸椎2番の下から腰椎5番の下まで計23個の椎間板があります。椎骨と椎骨の間でベアリングの役目をしバランスを取るための手助けをしてくれます。椎骨がズレると椎間板の働きが低下してしまいます。

椎間板の機能

問診

 当院のイップス治療では神経の流れを改善することと椎間板の機能を正常にすることを重視します。しっかりとした体の軸を作ることに繋がります。運動指導では、自分の体の軸を意識できるように練習していきます。どんな緊張状態でも自分の体の軸を作ることが出来れば落ち着いてプレー出来ますし、自然と大きく腕が振れます。

 イップスで悩んでいるアスリートの方は、今まで改善の為のいろいろ方法に取り組んできたと思います。それでも思うような成果が出ていない選手やどうにか自分のイップスに慣れ対応しているけど満足出来ていない選手がおられると思います。どう投げるとかどう打つとか小手先の技術では到底解決しません。どう投げると考える前に投げる為の体の準備が整っていないのです。イップスを治すには、アスリート自身の思い込みやいろいろと調べて理解していると思っていることを一度忘れて治療に取り組む必要があります。

2018年11月03日

イップス研究報告③

当院の技術的な考え①

 イップスの特徴の一つとして簡単なプレーほど症状が出やすく、難しいプレーの時は症状が出にくいと言われることがあります。一般的な説明では、イップスは意識が介入するほど起こりやすく、難しいプレーでは考える間がないので意識の介入がなくイップスは起こりにくいと言われています。本当にそれだけでしょうか?そのことについて考えてみます。

問診

 正常な人(イップスでない選手)の体の軸。軸がしっかりと安定しているので体重移動がしやすく回転力も強い。軸の回転に伴って腕が振れる。

 

問診

 イップスの選手の体は、軸がブレ不安定。軸がブレていると体重移動が上手く行かず早い段階から前方に体重が移動してしまい腕だけ後方に残される。残された腕をどうにか前に出そうとして体は早く開こうとする。(力が入って上手くトップの位置に腕を持って行けなかった場合)その結果、体幹と腕の振りのタイミングが合わず小手先に力を入れ投げるか、タイミングが合っていないことを察知し手は脱力してしまう。

 

問診

 イップスで体の軸がブレている選手が難しいプレーでバランスを崩したとします。

 

問診

 バランスを崩したことを察知した脳は、反射的に体を立て直そうとします。このとき体の軸が安定して結果的に腕が上手く振れる。

◎三半規管がバランスを崩したことを察知した時、無意識に体の立て直そうとして結果的に軸が安定する。野球に限らず、他の競技でも同じだと思います。サッカーならPKのキック。誰にも邪魔されず自分のタイミングで蹴れて簡単に思えますがサッカーの中では一番イップスの症状が出やすいと思います。逆に相手の選手と競り合ってどうにか蹴るような時は、イップスの症状は出にくいのです。ゴルフなら近距離のパット。簡単に思えますがイップスの症状は出やすいのです。バンカーからのアプローチなどは意外と楽に打てることが多いと思います。             

 一般的にイップスは精神的なものが原因で起こる運動障害と言いますが、それだけでは、説明がつかない事がいろいろとあります。

 緊張する場面で出やすく、緊張しない場面では出にくい。出る動きがある程度決まっていて、他の動きの時は出にくい。出やすい力加減、出にくい力加減がある。出やすい距離、出にくい距離がある。

 イップスを治す為のヒントは、体が記してくれています。体が教えてくれている事を正確に読み取り対処する事が大切です。 

2018年11月02日

イップス研究報告②

 心技体の3つが合わさったものがパフォーマンスだと思います。イップスの成り立ちには、いくつか種類があると思います。今回5タイプに分けてみました。

*体の故障とは、単に痛みがあるかないかということではありません。人それぞれが持っている本来の健康な状態に戻っているかどうか。例えば関節の可動角度が左右同じように動いているか。神経の伝達は正常かなど沢山の検査項目があります。

タイプ➀

問診

 緊張する場面のプレーや気を使う相手(例えば怖い先輩など)とのプレーでミスをしないように慎重になる。慎重なプレーをしたことによって本来の自分のホームではなくなり体の動きがバラバラになる。本来の自分の動きが出来なくなった事に気づき慌てて修正しようと練習を繰り返す。そうしているうちに間違ったホームが完全に脳に刻まれる。間違ったホームでプレーを続けていくうちに体のいろいろなところに負担が掛かり故障を繰り返す。

 

タイプ②

問診

 技術の向上を目指し工夫してプレーする。その結果いつもと違うホームになる。動きに違和感が出てきてパフォーマンスが低下する。本来の自分の動きが出来ずフラストレーションが溜まる。どんどん気持ちがネガティブになる。このような状態で練習を続けて行くうちに、体のいろいろなところに負担が掛かり故障を繰り返す。

 

タイプ③

問診

 体の故障でしばらく練習を休む。痛みが取れて練習に参加した時、故障した部位をかばいながらプレーする。だんだん本来のホームが分からなくなり失敗を繰り返す。翌日も上手く行かずパニック状態に陥る。そして気持ちがネガティブになる。このような状態で練習を続けて行くうちに、間違ったホームが完全に脳に刻まれる。技術が本来の状態から掛け離れたものになってしまう。

 

タイプ④

問診

 体の故障があって痛みがあるが大会前のレギュラー争いで練習を休まずに行った。痛みの為、ホームがいつものように出来ない。それでも痛みを我慢してやっている内にホームが分からなくなる。痛みと失敗の繰り返しで気持ちがどんどん落ち込んでいく。

 

タイプ⑤

問診

 心・技・体どれかから発症したイップスが月日が経つに連れ複雑化して行く。心・技・体がお互いに邪魔をしあいパフォーマンスは著しく低下する。

 

◎イップスを治療する時に心・技・体のどれから発症し、心・技・体のどれをよりフォーカスして治療を進めて行くかが大切です。  

2018年10月12日

イップス研究報告①

 イップスとは、ネガティブな体験をしたことによって、心に出来たシコリやシミのような物が動きの邪魔をしてしまう。

 よくイップスを理解していない方は、イップスを治そうとして運動動作(ホーム)に手を加えようとします。それは大きな間違いです。体が思い通りに動かない状態があるから今の運動動作(ホーム)になっているのです。原因があって結果があります。目に見える運動動作(ホーム)は、結果に過ぎません。原因ではないのです。原因ではない運動動作(ホーム)をいじくると体は嫌がります。間違った試みは、ことごとくイップスに跳ね返されます。そして体が嫌がるとリバウンドが起きます。そうすると心のシコリは大きくなり、シミはもっと濃くなります。その結果、動きはさらに悪くなる。

 体と心のバランスを良くしてシコリを小さく、シミを薄くすることが出来れば、自然と運動動作(ホーム)は良くなります。最終的には、心のシコリやシミを消し去るのが目標です。後は、イップスの方は、運動をする時に押し寄せる不安感から過度な運動調節をすることが習慣付いているので、過度な運動調節をしない為のやり方を指導する。しっかりした方向性が分かっていれば、早い段階で良い結果として現れます。

 間違えてダメなことは、イップス治療は何かを付け加えたり何かを変えたりすることではなく、余分なものを消したり取り除くことです。そしてイップスになる前、何も意識しなくても運動が当たり前に出来ていた数カ月前・一年前・三年前・五年前の感覚に戻す。そうすることで本来の自分の動きを取り戻せます。

 

2018年09月08日

2018年 甲子園 夏

問診

 第100回全国高等学校野球選手権記念大会が終わりました。100回大会ということもあり、すごい盛り上がりでした。12日に観覧に行ってきましたが朝6:30から球場の外は、チケットを買う人々で長蛇の列でした。高校野球を見に行くととても良い気持ちになります。選手たちは、全力でプレーし、アルプスステンドは、遠くから応援に来た人たちが必至で応援しています。外野席は、両校を温かく見守っています。どの試合も感動があります。猛暑の中あれだけ大勢の人たちが見に行くのも分かります。

 良い刺激を受けまた頑張ろうと思いました!また来年も行きます!

2018年08月21日

テーブルメンテナンス

問診

 テーブルのメンテナンスをして今年の仕事は、終了です。長く良い状態で使おうと思ったら、定期的なメンテナンスは、欠かせません。メンテナンスして、いつも使いやすい状態に保っていないと良い治療は、出来ません。テーブルの調子が悪くなってから、手入れするのでは、遅いです。

 人の体も同じで普段からのメンテナンスが大切です。カイロプラクティックは、予防医学です。日本では、認識せれていない部分も多いですが、予防医学なので、症状が無くても定期的に治療を行い良い状態を保ち続ける事が一番大事です。

 今、日本の平均寿命は、女性87.14歳 男性80.98歳 です。一つの治療目標として当院では、90歳までは、自分の足で歩けるような状態でいて頂きたいと思って治療しています。簡単なことでは、ないですが自分の足で歩けるということは、QOL(生活の質)を維持する為には、重要です。患者さん自身が自分の体の事を真剣に考える事も必要です。

 今年一年いろいろとお世話になりました。また来年から新たな気持ちで頑張ってやっていきますので、よろしくお願いします。


2017年12月30日

プロフェッショナル仕事の流儀

 昨日、NHKのプロフェッショナル仕事の流儀という番組で移植外科医の笠原群生先生が出られていました。

笠原先生の言葉

・難しい状態だったから、しょうがないなんて言い訳にならない。自分の力が至らないだけ。

・やるのではない、やりきる。

・患者さんの未来に責任を持って謙虚に努力し続ける。

良い事言われていたので、メモしました。

こういう気持ちで取り組みたいです。

2017年07月11日
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