イップス研究報告④

当院の技術的な考え②

 もしも真っ暗闇で音も聞こえず、匂いもしない風も感じない状態で前に歩くことが出来ますか?

イップス治療 イップス克服 イップス改善 イップス病院

 普段、私たちが歩いて目的地に行けるのは、周りの景色や車の通る音、飲食店から出る匂いや海から来る風など感じ取って自分の居る位置を把握します。自分の居る位置が基準になり目的地に行くにはどうするか考え歩き出します。

 真っ暗闇で自分がどこに立っているか分からなければ、歩いた先に崖があるかも知れないなど自然と自分の身を守るためにネガティブなことをイメージして怖くて前に進めません。

 イップスの選手は、体の軸が不安定で定まっていません。緊張する場面では筋肉が硬くなり体の軸はより一層不安定で定まらないものとなり、自分の体ではないような感覚に陥ります。軸が安定しないということは運動の時に基準となるものがないということです。運動の時に基準となるものがないと、どう投げ始めて良いのかどう打ち始めて良いのか分からなく躊躇します。スタートの時に基準が分からないのでスムーズにフィニッシュまで行くことなど出来ないのです。脳は、軸が定めっていない事を察知しています。だから投げる前からなんとなくイップスが出ることが自分では分かります。(予期不安)

 よくイップスの選手に対してポジティブに考えて楽しみながらやれば乗り越えられるなんていうアドバイスをする方がいますが、私は、それはイップスの選手に対してとても酷なことだと思います。何故なら真っ暗闇をポジティブに考え楽しみながら進めば大丈夫と言っているようなものだからです。本人はとても怖くて不安なのです。その恐怖感は、せめて懐中電灯でもなければ解消されません。イップスでは軸の安定感が恐怖感を安心感に変えてくれます。

 耳の内耳という所に三半規管があります。体のバランスと保つ役割をします。背骨の椎体と椎体の間には椎間板があります。頸椎2番の下から腰椎5番の下まで計23個の椎間板があります。椎骨と椎骨の間でベアリングの役目をしバランスを取るための手助けをしてくれます。椎骨がズレると椎間板の働きが低下してしまいます。

椎間板の機能

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 当院のイップス治療では神経の流れを改善することと椎間板の機能を正常にすることを重視します。しっかりとした体の軸を作ることに繋がります。運動指導では、自分の体の軸を意識できるように練習していきます。どんな緊張状態でも自分の体の軸を作ることが出来れば落ち着いてプレー出来ますし、自然と大きく腕が振れます。

 イップスで悩んでいるアスリートの方は、今まで改善の為のいろいろ方法に取り組んできたと思います。それでも思うような成果が出ていない選手やどうにか自分のイップスに慣れ対応しているけど満足出来ていない選手がおられると思います。どう投げるとかどう打つとか小手先の技術では到底解決しません。どう投げると考える前に投げる為の体の準備が整っていないのです。イップスを治すには、アスリート自身の思い込みやいろいろと調べて理解していると思っていることを一度忘れて治療に取り組む必要があります。

 

2018年11月03日