イップス研究報告⑭

イップスの治し方 

 ある研究機関の実験を引用させて頂きます。恐怖条件づけ・すくみ(恐怖)反応の実験です。(詳しくはイップス研究報告⑧参照)マウスに対してブザー音の後に電気ショックを行う。これを何度か繰り返すとマウスはブザー音が聞こえたら、すくみ(恐怖)反応を示すようになる。恐怖条件づけ・すくみ(恐怖)反応の強さは繰り返すたびに増加する。これは、ブザー音の後に電気ショックが来るということを予測し身構え防御態勢をとっているということです。恐怖体験は場合によってはトラウマになり次に同じような状況になった時、即座に扁桃体が反応し防衛本能が働きます。イップスの場合も投げる行為が恐怖条件づけされていて投げようとすると扁桃体が恐怖を感じ即座に防御態勢を取ろうと反応しているのです。(屈筋優位・緊張)
 問題は投げる行為が条件づけされていて防衛本能が働いているのをどうやって解除するかというとことです。
① まず記憶想起とは一度覚えた記憶を思い出すプロセスのことです。一度覚えて脳内で安定化された記憶を想起すると一度記憶が不安定になります。あえて不安定状態を作る。
② 恐怖を感じている事柄に関して身の危険を感じない状況が続けば、「消去」の反応が起こり、恐怖は減退する。恐い記憶を思い出すと、初めの内は恐怖を感じるが、怖がる必要がないことを徐々に学習・記憶する。過去の恐怖体験を書き換え脳に保存する。恐ろしい出来事を伴わない経験の回数が増えれば増えるほど扁桃体の感度は鈍くなる。

 投球イップスを例にするならトラウマになっている出来事を思い出す。記憶を想起してトラウマになっている記憶を不安定にする。そして投球動作とはどういった動きなのか再度理解していく。屈筋優位の状態でも体が上手く動く投げ方があるので、それを学習する。本来この投球動作が無駄のない正しい投球動作になります。動作を理解出来れば投げるという行為が簡単に思えてくる。そうすると投げる行為が難しい・怖いから簡単・楽しいに変わる。このことを書き換え脳に再保存する。そうすると恐怖条件づけ・すくみ(恐怖)反応が起きなくなり、イップスは治ります。前回にも説明しましたが扁桃体は無意識の領域です。意識的に簡単・楽しいと思っても、それは扁桃体には届きません。意識的なコントロールは届かないのです。扁桃体が簡単・楽しいと感じるように治療します。
 個人的には練習で得た感覚というのは、あまり当てにならないと思っています。それは長年野球をやってきたプロの選手でも何かをキッカケにイップスのなって投げ方が分からなくなるからです。動作を理解して、その上で感覚を磨いて行くことが大切です。感覚だけ磨けば良いというものではないと思っています。理解したうえで感覚を磨いて行けば、何かをキッカケにイップスになりかけたとしても自分ですぐに良い状態に戻せます。その事がイップス人口を少なくして行く方法だと思います。

 当院では長年カイロプラクティックを学び関節の構造を理解した上で投球動作を分析しています。カイロプラクティックをしっかり学んだ人間ならではの投球指導行っています。

 

2019年07月19日