イップス研究報告⑬

イップス発症の仕組み 

 危険な体験、怖い体験、怪我をして痛かった、病気で苦しんだことなどは忘れようと思っても忘れなれずに、キッカケがあれば繰り返し思い出す(フラッシュバック)嫌な記憶です。このような記憶をトラウマと言います。スポーツの時のミスもトラウマになることがあります。トラウマは大なり小なり誰もが抱えているものです。
 なぜ人間はトラウマとして脳の中に記憶を残すのでしょうか。人間にも本能の部分はあります。危険な体験、怖い体験、怪我をして痛かった、病気で苦しんだこと、そしてスポーツでのミス、これらが脳で恐怖体験として処理され記憶されてしまうことがあります。人間を含め動物は再び同じような危機的状況になった時、自分の身を守る為に防衛本能が働きます。時に防衛本能が過剰防衛となった場合、苦しみにつながることがあります。

 

問診

 脳の構造として表層は大脳皮質で意識的に考える脳です。脳の奥深くには大脳辺縁系と言われる部分があり本能の部分であり意識が届かなく無意識に働く領域になります。大脳辺縁系の中に扁桃体と海馬があります。

問診

 扁桃体は大脳皮質から送られた5感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)の情報を元に喜怒哀楽を判断し処理します。喜怒哀楽の中で嫌な記憶ほど残ると言われます。それは生き抜く為に防衛本能を働かせる必要があるからです。扁桃体が損傷すると、恐怖、不安、不快を感じることが出来なくなり、防衛本能が働かなくなって危機回避能力に問題が生じます。
 海馬は新しい記憶が長期記憶として安定するまでの間,短期記憶の貯蔵庫として働きます。「新しい記憶」は海馬に、「古い記憶」は大脳皮質にファイルされているのです。

 

問診

 

 例えば高いところに今立っていると想像して下さい。高いところに立っているという情報が目から大脳皮質の視覚野に伝達されます。次に視覚野から、大脳辺縁系の扁桃体に高いところに立っているという情報が伝達されます。扁桃体で「高い」という情報が危険か、どうかという判断されます。危険と判断された場合には、本能的に恐怖を感じ防衛本能が働きます。これは、生命が生き残っていくために非常に大切な機能です。

問診

 恐怖や不安などを扁桃体が感じたら、信号が間脳の視床下部と言うところに送られ自律神経系にスイッチが入ります。もう一つは視床下部から間脳の脳下垂体と言うところに信号が送られ内分泌系(ホルモンを出す働き)を刺激します。そして全身に影響が出て足が震える、足がすくむ、動けなくなる、動きが硬くなるなどが起きるのです。緊張状態が出来上がります。これは扁桃体が高いところは危険と判断し体が防御態勢をとっているのです。屈筋優位の状態です。(イップス研究報告⑦参照)

問診

 野球でボールを投げるということに扁桃体が強い不安や恐怖を感じた場合、やはり防衛本能が働きストレスホルモンが分泌されたり、自律神経反応が起こり無意識に体は防御態勢をとろうとする。

 「楽しい」「心地よい」と感じているとき、頭の中ではドーパミンという神経伝達物質が分泌されます。ドーパミンは、わかりやすく言うと「幸福ホルモン」「快楽ホルモン」とも呼ばれる物質です。逆に、不安や不満、恐怖といったストレスの多い状態や否定的な感情の強い状態が続くと、ドーパミンが分泌されにくくなります。
 扁桃体が恐怖やストレス感じた場合「ドーパミン産生が抑制」されてしまいます。
扁桃体での負の感情→ドーパミン量の減少
ドーパミンが多い→運動を促進させる(アクセル)
ドーパミンが少ない→運動を抑制させる(ブレーキ)

 このようなことがイップスの選手の体に起きていると考えられます。

2019年07月19日