イップス研究報告㉒

イップスについて① 

 今まで説明してきたようにイップスは脳の中の扁桃体にミスなどにより投げることが恐怖条件づけされて、次に投げようとすると扁桃体は、すぐに反応して防衛本能が働きます。防衛本能が働くと脳内のドーパミンの量が減少します。ドーパミンの量が多い状態だと体は動きやすく、少ないと体は動きにくくなります。その他に視床下部では自律神経的変化が起き、下垂体ではホルモン分泌が起こり体は、屈筋優位の状態になりイップスが起こります。
イップス治療 イップス克服 イップス改善 イップス病院

 イップスの選手を治療している中で、このような扁桃体の反応が見られない方が10人中1人ぐらいの割合でおられます。当院のブログのイップス研究報告⑱Youtubeのイップス研究報告⑩を見てイップスの検査法を正しくやっても何も反応が出ないのにボールを投げようとするとイップスの様な症状が出て上手く投げられない方がいると思います。投げることに扁桃体が反応してないのにイップスのような症状が出ている状態を私は、偽イップスと呼んでいます。
 偽イップスとは、扁桃体が反応していないのにイップスのような症状が出てしまっている場合で、これがどういうことかと言うと体には、いろいろな反射と呼ばれる機能が備わっています。反射の中でも伸張反射と言う脊髄反射偽イップスに関わっていると考えています。筋肉が瞬間的に引き伸ばされると収縮する反射伸張反射と言います。

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 筋肉の中には筋肉が伸びたことを感知する受容器(筋紡錘)があり、筋肉が伸ばされると感覚神経を通じて脊髄に信号を送ります。感覚情報は後方(後根)から脊髄に入り、脊髄の前方(前根)から同じ筋肉を支配する運動神経に信号を送り筋肉を収縮させます。このような反射を伸張反射と言います。

問診

 

 テイクバックは、投げる為の助走の役割をしている動作になります。間違ったやり方は、テイクバックで反動を付けるような動きでこのような動きになると上腕二頭筋や上腕筋、大胸筋、小胸筋、三角筋の前部繊維などに瞬間的に引き伸ばされるような力が働き伸張反射が起きることがあります。

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 伸張反射が起こると筋肉が収縮するので屈筋優位の状態になり腕が縮こまったり、腕が引っ掛かったり、肘が下がったりします。これが偽イップスです。偽イップスを防ぐにはテイクバックの時に先ほど言った筋肉に伸ばされるような力が働かないようにすることです。

 

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 イップスが奇病局所性ジストニアと言われることがありますが、私は投球動作で起こるイップスのような現象は、奇病局所性ジストニアなどのいわゆる病的な状態ではなく、①扁桃体で投球動作が恐怖条件づけされ起こるものと、私が偽イップスと呼んでいる②伸張反射によるもの、もしくは③扁桃体で投球動作が恐怖条件づけされ起こるものと伸張反射によるものの組み合わさったもの。これらの3つで多くのイップス症状の原因の説明が出来ているのではないかと思っています。扁桃体での反応と伸張反射は健康な人が当たり前に起こる現象なので心配いりません。それは体に備わっている機能の一つが正常に働いているのに過ぎないのです。しかし投球動作の途中にそれが起こると投げることの妨げになってしまいます。当院ではイップスも偽イップスもどちらも対応できるような準備をしてあります。


 

2020年10月23日