記憶の削除と書き換え
*すくみ反応(怯える、防御態勢をとる)
記憶の書き換えについて、
「嫌な出来事の記憶」が
「楽しい出来事の記憶」に書き換えられていたり、逆に
「楽しい出来事の記憶」が
「嫌な出来事の記憶」に書き換えられたりします。このような記憶の書き換えが、脳のどの領域でどのように行われているか説明していきます。
ケージに入れたオスのマウスの脚に弱い電気ショックを与えると、マウスは「このケージは怖いところだ」という「嫌な出来事の記憶」を脳内に作ります。その後、ケージに再度入れるとマウスは怖い経験を思い出して「すくみ反応」を示します。しかし、メスのマウスをケージの中に入れて一緒に遊ばせてやると、これは楽しい出来事ですから、今度は「楽しい出来事の記憶」が作られ記憶は書き換えられます。(ある研究機関の実験結果です。)

脳には記憶を司る部分として
海馬と
扁桃体があります。
海馬では
「嫌な出来事の記憶」が
「楽しい出来事の記憶」に書き換えられる。
扁桃体では
「嫌な出来事の記憶」は
「楽しい出来事の記憶」に書き換えられない。
海馬の記憶の書き換えは行いやすく、
扁桃体の記憶の書き換えは難しいのです。それは
防衛本能と
扁桃体が深く関わっていて
嫌な体験や恐怖体験の記憶は
扁桃体に色濃く残すというシステムになっているからです。次に同じような
嫌なことや恐怖を感じることが起こった時に
防衛本能が働き、一早く自分の身を守り生き抜く為に
扁桃体に記憶を残しているのです。

ではどのようにして
扁桃体の
恐怖記憶を削除や書き換えすればよいのか?ケージに入れたマウスの脚に弱い電気ショックを与えると、
「このケージは怖いところだ」と
扁桃体が
恐怖条件づけします。その後、ケージに再度入れると
恐怖条件づけされているので
扁桃体が即座に反応してマウスは
「すくみ反応」を示します。しかし、ケージに入れられて時間が経っても電気ショックが行われなければ、やがて
「すくみ反応」が起きなくなります。一度ケージの中で電気ショックを受けて
「ケージの中は怖いところだ」と
扁桃体が
恐怖条件づけしても次にケージの中に入れた時に最初は
「すくみ反応」を示しますが時間の経過と共に
「すくみ反応」が起きなくなるのは
扁桃体が
「ケージの中は怖いところだ」から
「ケージの中は何も起こらない安全な場所だ」と認識し直して
恐怖条件づけが削除されたと考えられます。
扁桃体では
「嫌な出来事の記憶」が
楽しい出来事があったからといって、すぐに書き換えられるのではなく、
扁桃体の
「嫌な出来事の記憶」は時間がかかるものの
嫌な出来事が何も起こらない状況が続けば削除されると考えます。削除された後にメスのマウスをケージの中に入れて一緒に遊ばせてると、
扁桃体でも「楽しい出来事の記憶」が作られ記憶は書き換えられるのではなかと思っています。
マウスと人間は違うと思うかもしれませんが
人間の脳の中で意識的な部分は10%で無意識的な部分が90%と言われています。ほとんどの部分が
意識的なコントロールが届かず
無意識のうちに働いているのです。
意識的な部分と言うのは身体を動かす場合は意識的に動かします。心臓が動くとか食べたものを消化するとか汗をかくとかは無意識的に勝手に行われていることです。
どうしても人は、
意識的な部分で何でも解決しようとします。しかし脳の中はコントロールの利かない
無意識の部分が大半を占めています。
無意識の部分に含まれる扁桃体がある事柄を
恐怖条件づけすると、そのことを思い出したり、そのことを連想させる出来事が起こるたびに反応します。
扁桃体が反応すると
防衛本能が働き、
交感神経↑になったり
ストレスホルモンが分泌されます。長期にわたって
交感神経↑や
ストレスホルモン分泌の量が多いと
脳内が栄養不足になり脳細胞がダメージを受け精神的症状(うつ・パニック・過呼吸・不眠)が出ます。
脳の
無意識の部分は本人を苦しめる為に働いている訳ではありません。ご自身を守る為に
無意識的に365日24時間休むことなく働いてくれています。ただし
扁桃体が反応して
防衛本能が過剰に働いた時に、ご自身を苦しめてしまいます。私は、
精神的な症状の治療の鍵は
扁桃体にあると考えます。当院では、薬を使わず心身ともに健康に導ける様に日々研究を続けています。