イップス研究報告⑥

イップスの起きやすい力加減と距離

 下の奇妙な絵は、ホムンクルスの脳の領域と言って脳の領域の割合を示したものです。絵を見ると手がとても大きくなっているのが分かります。手がより敏感で繊細な動きが出来る事を示しています。サッカーなど足をよく使う競技の選手の場合、鍛錬のよって足の領域が大きくなるので足の動きに関してもイップスは起こります。失敗などがトラウマになり不安な気持ちになった時、感覚が敏感で繊細な動きの出来る手に頼りたくなります。でも手に頼ろうとすると過剰に手先に意識が行き手先主導の投げる・打つという動作になってしまいます。本来、足→体幹→腕→手の順番で力が伝わるのに手先始動になると動くタイミングがバラバラになり、それを察知した脳は異常に気づき動きを停止するか筋肉が硬くなります。それが運動面から見たイップスのメカニズムと言ってもよいのかも知れません。期間が長くなれば手先主導の間違った動きを脳は記憶してしまいます。

イップス治療 イップス克服 イップス改善 イップス病院

 イップスは微妙な距離や微妙な力加減で起きやすいと言われます。当院のアンケートでも中間距離で30~70%の力加減の時にイップスは出やすいという結果になっています。近距離や10%ぐらいの力加減の時は出にくい。また遠距離や100%ぐらいの力加減の時も出にくいという結果になっています。今回この事について解説して行きたいと思います。      

 まず距離が近いと的が大きくなり、距離が離れるにつれて的が小さくなる。逆に距離が遠すぎる場合には相手がボールに合わせて動ける時間的余裕が生まれるので的を大きく設定出来る。だから的が小さくコントロールが要求される中間距離の時、手先に意識が行きやすくイップスが起こりやすい。

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 10%ぐらいの力加減で投げたり打ったりする場合、比較的近距離なことが多いので的が大きくイップスが起こりにくい。近距離だと手投げ手打ちでも対応出来てしまう。腕を振る速度が遅いので誤魔化しが利く。

 30~70%ぐらいの力加減の時は中間距離のことが多く、的が小さく手先に意識が行きやすい。微妙な力加減をしようとすると足の踏み込み幅は小さくなってしまう。足の踏み込み幅が小さいと体重移動と体幹の回転運動が上手く行きにくい。図B

 100%ぐらいの力加減の時は、中間距離であっても足の踏み込み幅が大きくなりやすく体重移動と体幹の回転運動が上手く行きやすい。遠距離は100%ぐらいの力加減で対応することが多い。図A

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 スムーズな体重移動や体幹の回転運動を行うには、股関節・腰椎・胸椎・肋骨の1つ1つが動く体であることが条件です。正しい投げる・打つ動作は、腕が体幹の回転によって遅れて引っ張り出されるような運動です。腕が体幹の回転に引っ張り出されるのを待たずに連動の順番を追い越して腕を前に出そうとした瞬間に体幹の動きは止まり体重移動も回転も不十分になります。小さな的を狙おうとすると、もともと過敏で繊細な手先を意識してしまい手や腕主導の運動になり体幹の運動が不十分なものになりイップスが起こりやすくなります。

 治療では、不安を取り除き(心)動ける条件の整った体にし(体)地面をしっかり使いスムーズな体重移動と体幹の力強い回転力を利用し遠心力を最大限に生かして腕を振る(技)ということを身に付けて行きます。

 

2019年01月16日